神殺しのクロノスタシスⅣ

夕方頃、突然学院に飛び込んできたシュニィ達の報告によると。

この日聖魔騎士団は、『サンクチュアリ』に強制捜査をかけたのだが。

『サンクチュアリ』の活動拠点に足を踏み入れたところ。

突如として、部屋の中に不思議な魔法陣が浮かび上がり。

その魔法陣の中に立っていた、吐月、キュレム、ルイーシュ、無闇の四人が、魔法陣に吸い込まれるようにして消えてしまったという。

そして、その消えた四人の行方は、未だに分からないと…。

「はい…。まさか、こんなことになるなんて…」

シュニィは、意気消沈したように言った。

「そ、その四人の行方は…エリュティア君の探索魔法では…?」

と、シルナが尋ねた。

行方不明者の捜索なら、エリュティアの十八番だ。

彼なら、少しでも四人の「痕跡」を辿って、足取りを掴めるのではないかと思ったのだが…。

「それが…エリュティアさん曰く、全く『痕跡』が残っていないそうです。今も探してはいますが…。手がかりが全くなくて…」

「…!」

「痕跡」が、全くない…?

そんな…。それじゃ、探索魔法でも行方を探せない…。

「エリュティアさんが言うには、消えた四人はもう、この次元にはいないそうです。恐らく別の次元の…別の世界に飛んでしまったと…」

「…そんな…」

別の次元に、強制転移させられたとでも言うのか?

いや、ただの転移だけなら、別に良い。

彼らは聖魔騎士団魔導部隊の大隊長だ。異なる次元間の移動くらいは簡単に出来る。

だから、異次元に飛ばされたくらいなら、すぐに戻ってこられる。

でも、未だに戻ってこないということは…。

…彼らの力では戻れないということだ。現時点では。

「こんな…ことになるなんて。四人の身にもしものことがあったら…」

シュニィは、悲嘆に暮れた顔で俯いた。

多分シュニィのことだ。自分の警戒が足りなかったせいで、このような事態を引き起こしたのだと思っているのだろうが…。

「…大丈夫だよ、シュニィちゃん」

シルナが、シュニィを励ますように言った。

「学院長先生…」

「彼らは皆、優秀な魔導師だ。そう簡単にやられたりしない。それに、その前に必ず、私達が助け出す」

…その通り。

シルナにしては、良いことを言う。

「申し訳ありません、学院長先生…。これは聖魔騎士団で起きた問題。私達が始末をつけなければならないのに…。先生方を巻き込んでしまって…」

「もー、水臭いなぁ。そんなこと気にしなくて良いんだよ。可愛い教え子の為なんだから。いつでも頼ってくれて良いんだよ」

「そうだ。それに、俺達も負けず劣らず、学院の問題に聖魔騎士団を巻き込んでるからな。たまには恩返しさせてくれ」

シルナに続いて、俺もそう言った。

すると、シュニィは。

「お二人共…ありがとうございます」

涙ぐまんばかりに、深々と頭を下げた。

馬鹿だなぁ。一人で背負おうとして。

頼りにすれば良いんだよ。シルナなんて、大概暇してるんだからさ。

「羽久が私に失礼なことを考えてる気がするのが、気がかりだけど…。今はそれどころじゃないや」

そうだな。

「早速だけど、シュニィちゃん…。その不思議な魔法陣について、もっと何か、情報はない?」

と、シルナが尋ねた。

「はい…。恐らくあの魔法陣の力の源は、部屋の奥にあった…水晶玉ではないかと思うのですが…」

「水晶玉…?」

これまた、不穏な手がかりだ。