「…!?」

「これは…!?」

一同騒然。

防御魔法を展開したが、それは無意味だった。

何故なら。

「えっ」

まず始めに、水晶玉の一番近くにいたルイーシュが、声をあげたかと思うと。

ぱしゅんっ、と音を立てて、消えた。

比喩ではない。

本当に、瞬間移動でもしたかのように消えてしまったのだ。

「ルイーシュ!?」

相棒が消えたことに、真っ先に声をあげたキュレムが。

またしても、ぱしゅんっ、と音を立てて消えた。

「!?」

一体、何が起こってるんだ?

続けて。

「!?」

「あっ…」

水晶玉に近い順に、無闇、吐月が順番に。

ぱしゅんっ、と音を立てて消える。

…不味い。

「っ!皆さん…!」

「今、助け…」

慌てて、魔法陣に駆け寄ろうとするクュルナとエリュティアを。

「待て、行くな!!」

俺は鋭い声をあげて制止した。

弾かれたように、二人は足を止めた。

魔法陣の中に入ったら、姿を消されるのなら。

魔法陣に入ってはいけない。

でも、既に魔法陣に入ってしまっている者は…!

「シュニィ!!」

「!アトラスさん…!」

アトラスも、俺と同じ考えに至ったのだろう。

アトラスは、せめてシュニィだけでも逃がそうと、思いっきりシュニィを魔法陣の外に突き飛ばした。

「きゃっ…!」

「…っ、大丈夫か!?」

俺は、突き飛ばされたシュニィを抱き留めた。

しかしシュニィは、それどころではなかった。

「アトラスさん…!!」

自分を庇ったアトラスが、自分の代わりに消えてしまうのではないか、と。

悲痛な声をあげたシュニィだったが。

「…!?」

アトラスは消えていなかった。

アトラス自身も、呆然としていた。

シュニィを庇って、それでシュニィだけでも助かるなら、自分は消えても良い。

そんな覚悟だったのだろう。

しかし、アトラスは消えていなかった。

魔法陣の中で、ただ突っ立っているだけだった。

「…何が…何が起こった…?」

全てが、あまりにも突然の出来事で。

消えずに残った俺達は、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

ただ、会議室の奥に鎮座された水晶玉が。

不気味なほどに、赤く輝いているだけだった。