ここが、世間を騒がせている『サンクチュアリ』の本拠地かと思うと。

何だか、拍子抜けした感じもするが…。

でも、堂々と活動することは出来ないんだから、これくらいさびれていた方が、隠れるにはうってつけなのかもしれない。

で、俺達はこれから、このビルの中に突入する訳だが…。

その前に。

「シュニィ。事前通告はしてるんだよな?」

俺は、シュニィにそう尋ねた。

ちゃんと、「これから強制捜査しますよ」と通告しておかないと。

俺達は、ただの不法侵入者だ。

しかしさすがシュニィ。そこは抜かりなかった。

「はい、勿論です。返事は…来ませんでしたが」

「そうか」

上等だ。

返事をしないってことは、「やれるもんならやってみろ」ってことだろう?

じゃあ、やってやるよ。

「皆さん。相手は武装している可能性があります。充分に警戒し、」

「任せろシュニィ!シュニィに攻撃せんとするならず者は、全員俺が叩き斬る!」

「…相手は一般人ですから、叩き斬ってはいけません」

マジレスされてんぞ、アトラス。

頼もしい旦那で良かったな。

「よし、俺が先行する。行くぞ!」

「ちょ、アトラスさん…!」

アトラスは、早速ビルに乗り込もう…と、したが。

「ぬっ」

ビルの入り口には、鉄の鎖が何重にも巻かれ、頑丈に塞がれていた。

絶対に中に入れたくない、という堅い意志を感じる…が。

こんなものは、うちの団長にとって、何の障害にもならない。

「絶対に入れたくないという訳か…良いだろう」

アトラスは、すらり、と腰の大剣を抜いた。

「アトラスさん、良いですね。過度に破壊してはいけませんよ。中に人がい、」

「どっせぇぇぇぇい!!」

「話を聞きなさいったら!」

さすがアトラス。

シュニィの制止も聞かず、アトラスは大剣を叩きつけるようにして、入り口を破壊した。

強制捜査の事前通告はしているから、強制的に立ち入る権限はあるものの…。

…入り口、木っ端微塵だぞ。

「よし、これで入れるぞ!」

「…」

シュニィ、もう何も言わない。

賢明な判断だ。

アトラスは、『サンクチュアリ』の連中にシュニィを魔女呼ばわりされて以来、頭に血が上ってるからな。

言っても無駄だ。

アトラスは、大剣片手にずんずん進んでいく。

恐れを知らない、まさに歴戦の勇者。

シュニィと俺達魔導部隊隊長達は、そんなアトラスの一歩後ろをついていった。