神殺しのクロノスタシスⅣ

「ちょっと聞こえた話によると…線路が…壊れる?壊れされた?みたいなことを話してて…」

「…線路が?」

「はい。人身事故とかではない…?のかもしれません。ごめんなさい、私もよく聞こえなくて…これ以上は…」

「そうか、分かった」

とにかく、列車が止まってる原因は、人身事故ではないんだな。

誰かが列車に轢かれて…という、最悪の事態ではないのは、不幸中の幸いだな。

しかし、線路が壊れたって?

一体、何だってそんなことに…?

…ともかく。

「駅員に、直接聞いてみるしかないな」

「うん!」

シルナも、激しく同意。

事情が分からないなら、事情を知ってる人に聞くまでだ。

「えっ、で、でもこの人混みですよ?」

と、狼狽えるヘーゼル。

まぁ、そんな反応になるのは当然だが。

「大丈夫だ、何とか掻い潜っていくよ」

「途中で、他の生徒も見つけられるかもしれないしね!」

生徒を見つける為なら、群衆突破も厭わないシルナである。

お前はそういう奴だよ。

さっきは、ヘーゼルの安全第一だったから、とにかく群衆から外に出すことを優先していたが。

俺とシルナだけなら、少々突き飛ばされても、どうということはない。

「ちょっと、シルナと一緒に駅員のところに行ってくる。ヘーゼル、お前はここで待ってるんだぞ」

「そうだよ!危ないから、中に入っちゃ駄目だよ」

「は、はい。分かりました」

「後で、迎えに戻ってくるからね。不安かもしれないけど、ちょっと我慢してて。…はいっ、これあげるから」

シルナはそう言って、持ってきたチョコレート菓子を、ヘーゼルに渡した。

そういや、持ってきてたな。

今ばかりは、このチョコレートが役に立ったな。

チョコでも摘みながら、ゆっくり待っててくれ。

「あ、ありがとうございます…」

「じゃあ、行ってくる」

くれぐれも、ここから動かないようヘーゼルに指示して。

俺とシルナは、再び人でごった返している、群衆の中に入っていった。