神殺しのクロノスタシスⅣ

「ナジュせんせー」は、足早に俺と『八千代』を連れ出した。

さて、何処に向かうのやら。

学院長室かな?

「ねぇ、そろそろ話してくれても良くない?もうツキナも聞いてないし」

「う…。やっぱり、バレる?」

バレる?じゃないよ。

「バレバレだよ。演技下手過ぎでしょ学院長」

「一目で分身だって分かったよ」

『八千代』もこう言ってる。

「全く…。君達には敵わないなぁ」

「当たり前だよ」

誰だと思ってるのさ。

分身と本体の区別くらい、一瞬で見分けられるよ。

そう、この「ナジュせんせー」は、学院長せんせーが分身魔法を使い、ナジュせんせーの姿に擬態しているだけ。

ナジュせんせーの偽物だ。

「園芸部に君達を呼びに行くには、ナジュ君の姿の方が、違和感ないかなと思って…」

「そんなことだろうと思った」

それにしては、演技下手だったよ。

まぁ、素直に学院長の姿をして来たら、ツキナが「え?何でここに学院長が?」ってなるだろうし。

俺達が学院長直々に呼び出されたとなると、何かあったのかと疑問に思うだろう。

ツキナは単純、じゃなくて素直な良い子だから。

適当な理由をつけてあげれば、それで納得してしまいそうだけどねー。

「…で、何があったの?本物のナジュせんせーは何処?」

本体がいるなら、本体が呼びに来れば良い。

それなのに、わざわざ学院長がナジュせんせーの分身を使うってことは…。

ナジュせんせーは、俺達を呼びに来るほどの余裕はない、ってことなんだろう。

大方、何処かで誰かの心の中でも読んでんのかな、と思ったが。

「ナジュ君は…今、医務室にいる」

これには俺も、『八千代』も驚いた。

あの不死身の、俺の毒魔法さえけろっと解毒してしまうナジュせんせーが、医務室?

また爆発に巻き込まれて、ミンチにでもなったの?

いや、でもそんな爆発音は聞こえなかったし。

…考えられるとしたら…。

「また、読心魔法の乱用?」

「…お察しの通りだよ」

成程ね〜。またやったんだ、あの人。

ほんっと懲りないなぁ。

「ば…っかだなぁ〜あの人…。何やってんの?馬鹿なの?」

「あはは…。羽久も同じこと言ってたよ…」

そりゃ言われるでしょ。

「不死身先生、また寝込んじゃったの?」

と、尋ねる『八千代』。

「ううん、寝込むまでは行ってない。頭痛と過労。天音君が傍について、看病してるよ」

「そっか。それなら良かった」

本当だよ。

また寝込まれたら、またツキナが悲しむところだった。