神殺しのクロノスタシスⅣ

『八千代』の指差す先には。

「あっ、ナジュ先生だぁ!ナジュ先生〜っ!」

ツキナが、ぶんぶんを手を振った。

ナジュせんせーは、以前の縁もあり、何かと言えば、この園芸部を訪ねてきてくれている。

から、ナジュせんせーが訪ねてきても、何ら不思議はない…けれど。

俺は一目見て、すぐに分かった。

そして、俺が分かることを、『八千代』が分からないはずもなく。

「え?あれ、分身…」

と、案の定『八千代』は言いかけたので。

俺は口元に人差し指を立てて、『八千代』に黙っているように指示した。

「…」

俺の意思が通じたのか、『八千代』は両手で口を押さえて黙った。

別に手ぇ使わなくても、普通に黙っててくれるだけで良いよ。

「ナジュ先生!来てくれたんですね」

はしゃぐツキナに、ナジュせんせー(仮)は、戸惑いながら、

「うん、あっ、はい。そうなんだけど…」

ちょっと。ちゃんと演技してよ、わざわざその姿で来たんなら。

「令月く、令月さんと、すぐりさんに用があって」

「ふぇ?」

「ちょっと来てもらえませんか?二人にやってもらいたいことがあって」

へぇ。

俺達に用事だって。まぁ、そんなところだろうと思ってたけど。

わざわざ、そんな姿で来るんだから。

「そっか〜。だって、『八千代』。行こっか」

「うん」

『八千代』も、何事かあったと判断したらしく。

「仕事」のときの目になっていた。

「そんな訳だから、ツキナ。俺達ナジュせんせーの用事に付き合ってくるよ」

「え〜…。すぐり君行っちゃうの?」

聞いた?今の。

録音して取っておきたいんだけど。

めちゃくちゃ後ろ髪引かれるなぁ〜…。

でも、この「ナジュせんせー」に呼ばれたからには、行かない訳にはいかないよね。

「ごめんごめん。明日もちゃんと来るから、許して」

「む〜。分かった。じゃあ明日ね!」

あーめっちゃ可愛い。

全くもう。

ツキナがこんなに可愛いのに、わざわざ俺達を呼びつけるとかさぁ。

それ相応の用事があるんだろうね?

ねぇ、シルナ学院長せんせー?