俺の中に、悪戯心が芽生えた。
じゃあ、ちょっと驚かせてみようかな。
「ツキナってば、知らないで雇ってたの?」
「ふぇ?うん」
「この人はなんと、三年生の先輩で、しかも三年生の中では知らない人はいない、超優秀な天才魔導師なんだよ」
俺は、いかにもな雰囲気を出して、大袈裟にそう言った。
『八千代』は、相変わらず何も分かっていない顔。
しかし、ツキナは。
「え、え、えぇーっ!!この人、先輩だったの!?」
うん。良い反応、良い反応。
ってかツキナ、本当に知らずにこき使ってたの?
さっきまで『八千代』に向かって、「隊員その2!この肥料を運べ!」とか言って命じて、重い堆肥の袋を担がせてたのに。
『八千代』は『八千代』で、年齢差とか、先輩後輩とか気にするタイプじゃないので、素直に言うこと聞いてたけど。
「しかも、そんな天才なの!?」
あー、上手いことハマってくれちゃって。
めっちゃ可愛くない?
「そう、天才なんだよ。古今東西、百の魔法を使える天才魔導師でね〜。その実力は、入学式でシルナ学院長が、『感服しました』って土下座したと言われてるくらいなんだ」
言うまでもないけど、嘘である。
『八千代』は確かに天才の部類に入る人種だけども、事実なのはそこだけ。
百の魔法どころか、一つの魔法しか使えないし。
俺達編入学生だから、そもそも入学式出てないし。
学院長も、イレースせんせーに怒られたとき以外に、土下座することはないし。
ほぼ全部、それこそさっきのツキナが言ってたような、作り話なんだけど。
しかしツキナは、何でも真に受けるので。
「そそそ、そんな大層な御方とも知らず、大変な失礼を申し上げましたぁぁ!」
土の上に膝をつき、全力土下座。
慌てっぷりが凄い。
あと可愛い。
「…?よく分かんないけど、良いよ」
『八千代』は、首を傾げながらそう言った。
そんなことだろうと思った。
「よ、良かった。怒られるかと思ったよ〜…」
「良かったねツキナ。許してもらえて」
ここぞとばかりに、よしよし、とツキナの頭を撫でてあげた。
再びガッツポーズ。
俺、恋の駆け引き超上手くな〜い?
これもう、ナジュせんせーに引けを取らないよ。
と、思っていたそのとき。
「…誰か来るよ」
『八千代』が、校舎の方を指差した。
じゃあ、ちょっと驚かせてみようかな。
「ツキナってば、知らないで雇ってたの?」
「ふぇ?うん」
「この人はなんと、三年生の先輩で、しかも三年生の中では知らない人はいない、超優秀な天才魔導師なんだよ」
俺は、いかにもな雰囲気を出して、大袈裟にそう言った。
『八千代』は、相変わらず何も分かっていない顔。
しかし、ツキナは。
「え、え、えぇーっ!!この人、先輩だったの!?」
うん。良い反応、良い反応。
ってかツキナ、本当に知らずにこき使ってたの?
さっきまで『八千代』に向かって、「隊員その2!この肥料を運べ!」とか言って命じて、重い堆肥の袋を担がせてたのに。
『八千代』は『八千代』で、年齢差とか、先輩後輩とか気にするタイプじゃないので、素直に言うこと聞いてたけど。
「しかも、そんな天才なの!?」
あー、上手いことハマってくれちゃって。
めっちゃ可愛くない?
「そう、天才なんだよ。古今東西、百の魔法を使える天才魔導師でね〜。その実力は、入学式でシルナ学院長が、『感服しました』って土下座したと言われてるくらいなんだ」
言うまでもないけど、嘘である。
『八千代』は確かに天才の部類に入る人種だけども、事実なのはそこだけ。
百の魔法どころか、一つの魔法しか使えないし。
俺達編入学生だから、そもそも入学式出てないし。
学院長も、イレースせんせーに怒られたとき以外に、土下座することはないし。
ほぼ全部、それこそさっきのツキナが言ってたような、作り話なんだけど。
しかしツキナは、何でも真に受けるので。
「そそそ、そんな大層な御方とも知らず、大変な失礼を申し上げましたぁぁ!」
土の上に膝をつき、全力土下座。
慌てっぷりが凄い。
あと可愛い。
「…?よく分かんないけど、良いよ」
『八千代』は、首を傾げながらそう言った。
そんなことだろうと思った。
「よ、良かった。怒られるかと思ったよ〜…」
「良かったねツキナ。許してもらえて」
ここぞとばかりに、よしよし、とツキナの頭を撫でてあげた。
再びガッツポーズ。
俺、恋の駆け引き超上手くな〜い?
これもう、ナジュせんせーに引けを取らないよ。
と、思っていたそのとき。
「…誰か来るよ」
『八千代』が、校舎の方を指差した。


