神殺しのクロノスタシスⅣ

「仕方ないよ、ツキナ。ここ、魔導学校だからね。どうしても魔法サークルの方が人気だからね〜」

俺は、『八千代』と違って。

こういうとき、ちゃんと好感度を上げていくタイプだから。

しかも、あわよくばスキンシップを図ろうと、ツキナの頭のてっぺんを、よしよしと撫でてあげた。

これあれだから。セクハラ的な奴じゃなくて。

慰めてるだけなので、ノーカンノーカン。

これが出来ないから、『八千代』は『八千代』なんだよなぁ。

まぁ『八千代』がツキナに同じことをしたら、今すぐここ、戦場になってたと思うから。

その点、『八千代』が筋金入りの朴念仁であるところは、俺にとっては儲け物ってことで。

「…くすん」

あ、ツキナ落ち込んでる。

その顔も可愛いんだよなぁぁ〜…。泣きべそかくだけで可愛いとか、ズルくなーい?

「園芸部なら、ふつーの中学校や高校にもあるからねー。仕方ないね〜」

何なら、自宅の庭でも出来るもんね〜。

そもそも、入部希望者なんか来たら、俺とツキナの聖域が荒らされるもんね〜。

俺としては、誰も来てくれない方が有り難いんだよね〜。

「それよりツキナ、さっき種を蒔いた大根、ちゃんと育つと良いね〜」

と、大好きな農作物のことを話すと。

「…うん!」

一気に、顔がパッと明るくなった。

やっぱりツキナと言えば、この顔だよ。

美味しく頂きました。ありがとうございます!

「すぐり君、大根おろし好きだったもんね!おっきく育てよお前達〜」

え、俺大根おろし好きだっけ?

そうでも…あ、そっか。

ナス事件のときに、自称大根おろし好きを名乗ったんだっけ。

実は特別大根が好きな訳でも、嫌いな訳でもないから良いけど。

え?ナスもトマトもピーマンもセロリも嫌いなのに、大根は食べられるのかって?

大根は別に良いよ。白いし。クセないし。

ちょっとした鈍器にもなるし。用途も色々あって。

だから今回俺は、安心して大根の収穫期を迎えられるんだな〜。

「『八千歳』って、大根好きなんだ…。僕も好きだよ」

と、『八千代』が言った。

あ、そうなの?

「じゃあ大根が大きくなったら、隊員その2にも食べさせてあげるね!」

ちょっと。

『八千代』が余計なこと言うから、ツキナ張り切っちゃったよ。

ツキナの手料理を味わえるのは、俺だけで良かったのに。

まぁ良いか。『八千代』なら別に、無害だし。

「うん、分かった」

と、頷く『八千代』を。

ツキナは、しばしぽやんとして見つめていた。

…え?何見てるの?

まさか、何かに目覚めた訳じゃないよね?

すると。

「…すぐり君」

「ん?」

ツキナは、こてん、と首を傾げ、こちらを向いて尋ねた。

「この助っ人さんって、誰?同じ学年に、こんな人いたっけ?」

あれ?それ、尋ねるの今なんだ?