神殺しのクロノスタシスⅣ

「お前…!大丈夫か!?」

「ナジュさん!しっかり…」

俺と天音が、反射的にナジュに駆け寄った。

「お前、何したんだ…!?」

「あぁ…。えぇ、ちょっとまぁ…。校内一周して、来場者全員、10人ずつくらい心読んで回ったもんで…」

「じゅっ…」

10人ずつ、来場者全員、だと?

お前…!『サンクチュアリ』の刺客を探す為に、そんな無茶を…!

「さすがの僕も、ちょっと頭痛が…」

頭痛、なんてものじゃないだろう。

魔力の消耗、それによる疲労。

そして、読心魔法を乱用したときに出る痛み。

それはつまり、脳内のキャパを越えかけているということだ。

「馬鹿…!無理をするなって、何回言ったら分かるんだお前は!」

「いや、大丈夫なので…。それは良いから、早く校内を捜索に…」

何が大丈夫なんだ、この馬鹿。

何回言っても飽き足らん奴め。

「…ナジュ君が言うなら、オープンスクールは、早めに切り上げた方が良いだろうね」

「しかし、体験授業の予定はまだ残っています。今から切り上げるのは…」

「実技の方は無理だよ。ナジュさんこんな状態なのに」

シルナとイレース、天音が言った。

言いながら、天音は早速、ナジュに回復魔法をかけていた。

失った魔力が戻る…とまでは行かないが、ある程度の疲労回復にはなるだろう。

「幸い、三回目の実技体験授業の予約は、まだ始まってない。中止になったことにして、取り止めよう」

シルナがそう提案した。

かなり強引な方法だが、これ以上ナジュを酷使する訳にはいかない。

それに、『サンクチュアリ』の刺客が偵察に来ているのなら、これ以上魔法を見せるのはやめた方が良い。

「ですが、座学の方は…」

「…もう、希望者が教室に集まってる。今更取り止めは…」

「…」

出来ない、か。折角集まってもらってるのに、やっぱり帰れ、は無理がある。

「仕方ない。座学の方はこのまま予定通りやれ。実技だけ中止だ」

「…そうなるね」

「あと、シルナ。分身を量産しろ。監視の目を増やすんだ」

こんなときこそ、シルナ分身の強みが活かされる。

怪しい奴は、徹底的にマークするんだ。

「分かった、えぇと…虱潰しに探すから…じゃあ、シルナトコジラミを量産しよう!」

俺が頼んどいて文句言うのもなんだが、やっぱキモいな。

シラミに監視されるなんて。

しかし、この際四の五の言ってる場合じゃない。