神殺しのクロノスタシスⅣ

その姿を見て、死ぬほど驚いた。

「ナジュ…!?お前、どうしてここに…。ってかその顔、」

「学院長。このオープンスクール、即時中断した方が良いです。もう、手遅れだと思いますけど…」

「…!?」

オープンスクールを中断…だって?

いや、それよりも。

「お前大丈夫か!?顔真っ青…」

「いや、僕のことはどうでも良いんで…」

何がどうでも良いって?

そんな真っ青な顔して。

「何事なんです?何があったんですか?」

冷静沈着に尋ねるイレース。

「さっき、実技の体験授業を行ったとき…。ふと心の中を覗いてみたら、『サンクチュアリ』の…魔導師排斥論者が、紛れ込んでました」

「何だと…!?」

何で、魔導師の学校に魔導師排斥論者が。

しかも、『サンクチュアリ』の?

奴らが俺達に、何の用事があるって言うんだ。

「単なる偵察かと思ったら、奴らの心の中、憎しみやら嘲りやら、とにかく負の感情でいっぱいで…。それだけならまだしも、勝ち誇ったように『良い気になっていられるのも、今のうちだけだ』とか考えてる奴もいて…」

…それって…。

「体験授業が終わってすぐ、校内を一周してきましたが…。通りすがる人の中に、10人いました。『サンクチュアリ』からの刺客と思われる人物が、10人」

「そんなに…!?」

「何か企んでいるとも知れません。この機に紛れて、学院に何か…それこそ爆発物でも仕込んでいたのかもしれない。シャネオン駅の一件のように」

…マジかよ。

それは…さすがに洒落にならないぞ。

爆発物じゃなくても、盗聴器とかカメラとか…。

オープンスクールでは、校内を自由に動き回れる。誰が来ていたとしても不思議ではない。

この機会を良いことに、校内に何かしらの仕掛けを施していたとしても…おかしくない。

「僕の読心魔法は、彼らが『今』考えていることしか読めないので…。もし彼らが、僕が読心するより前に何か仕込んでいたとしたら、僕にも特定出来ません。虱潰しに探すしか…」

「…なんてことを…」

「とにかく…これ以上『サンクチュアリ』の刺客をのさばらせておくのは、不味いですよ。いや、向こうが何か仕掛けるつもりで来てるんなら、もう手遅れだとは思うんですけど…」

オープンスクールのピーク…。人が一番集まるであろう時間、つまり…。

人混みに紛れて、犯行に及ぶにはうってつけの時間…は、もう過ぎている。

本当に『サンクチュアリ』の刺客が、学院に何か仕掛けを施しに来たのなら…それはもう、行われた後だろう。

「今すぐにでも、オープンスクールは中断して…。校内を、虱潰しに探した方…が…」

と、そこまで言って。

「っ…」

ナジュは、壁にもたれて側頭部を押さえ、その場に崩れ落ちた。