神殺しのクロノスタシスⅣ

「何だよ、その気持ち悪い顔は…」

うきうきしやがって。

オープンスクールは祭りじゃないんだぞ。分かってるか?

しかし、現在頭の中お花畑のシルナには、そんな悪口は聞こえていないらしく。

「いやぁ〜今年の生徒は凄いよ〜!皆すっごく賢くてね!将来有望な子達ばっかり!うち受験してくれると良いなぁ〜」

夢見心地のシルナである。

…ちなみに、これ、毎年言ってるからな。

「今年の生徒はレベル低そうだったな…。うちに受験しに来ても、落ちるだろうな…」とか言ってたこと、一度もない。

つまり、例年通りってことね。はいはい。

「何ですか、あなたは…。そんなことをわざわざ伝えに来たんですか?」

イレースが、しかめっ面で言った。

それだけの為に、わざわざ自分は片付けの手を止めたのか、と不満そうだ。

「そんなことって、大事なことだよ!来年の私達の生徒になるかもしれない子なんだよ!?」

「今日来た来場者の全員が、イーニシュフェルト魔導学院を受験するとは限らないでしょう」

「きっと来てくれるもん!」

何だその自信は。

それは結構だが、お前、受験に来てくれたとしても、定員があるの分かってるか?

全員を合格にする訳にはいかないんだぞ?覚えてるか?

覚えてないんだろうな。今は。

「それよりあなた、午後二回目の体験授業までには、まだ少し時間があるでしょう。ここの片付けを手伝っていってください」

イレースには、相変わらず慈悲というものがなかった。

生徒自慢に来たと思ったら、片付けを要請されるとは。

「えっ。じ、じゃあそろそろ次の体験授業の為に、教室にもど、」

「待ちなさい。あと一時間はあるんですよ。今から行くんじゃ早過ぎるでしょう。良いから片付けを手伝いなさい」

ガシッ、と肩を掴まれるシルナ。

最早、逃げ場はない。

安易な気持ちで、イレースのもとに来たのが間違いだったな。

因果応報だ。

「うぅ…。イレースちゃん、人使いが荒い…」

「…何か言いましたか?」

「いっ、いえ何も!喜んで片付けます!」

「そう、それで良いんです」

さすが鬼教官。容赦ねぇ。

シルナは渋々と、予備のパイプ椅子を片付けようとした…。

…そのときだった。

「…あぁ、良かった。皆さんお揃いでしたね」

この場にいなかった一人の教師が、講堂に駆けつけた。