神殺しのクロノスタシスⅣ

これで、午後の部一回目、17人目だな。

あと3人で、午後の部の一回目は終了となる。

「は、はい」

「そんな緊張しなくて良いですよ」

杖を握り締めて、ガチガチに緊張した、恐らく小学校六年生の女子生徒。

心の中を覗いてみると、案の定緊張でいっぱい。

「失敗したらどうしよう」とか、「下手くそだって言われるかも」とか、色々心配しているようだ。

教師としては、下手な生徒もいれば上手な生徒もいるものだと分かっているので。

別に下手だろうと上手だろうと、どちらでも構わないのだが。

オープンスクールで、憧れのイーニシュフェルト魔導学院に来て、運良く体験授業を受けられて。

自分の魔法を、イーニシュフェルト魔導学院の教師に見てもらい、評価をもらえる大切な機会。

絶対に失敗したくない、という強い意気込みを感じる。

それは分かるけども、人間、力めば力むほど、空回りしてしまうものだ。

「さぁ、リラックスリラックス。僕のことはそう…大根か何かだと思って、気にせず魔法打ってください」

「…ぷっ…。あっ、済みません」

ちょっとツボったらしいが、すぐに我に返った。

そう、ちょっと緊張ほぐれましたね。

「大丈夫ですよ。さぁ、どうぞ」

「は、はい…。dinw」

彼女が杖を振ると、そこに小さな旋風が起きた。

おっ、風魔法ですか。

僕の得意魔法でもある、風魔法。

しかも彼女の風魔法は、かなりの威力で。

小さな旋風が、魔導人形の胴体を擦り、僅かに魔導人形に切り傷をつけた。

ほう、やりますね。

この魔導人形には、ある程度の耐久力が備わっている。

イーニシュフェルト魔導学院でも、高学年になってくれば、魔導人形を破壊するほどの魔法が使えるようになる生徒が、少なからず出てくるが。

低・中学年には、ほとんど無理だ。

現在イーニシュフェルト魔導学院の一年生から四年生までで、魔導人形を破壊するほどの魔法が使える生徒と言えば。

ジャマ王国出身の、元暗殺者組二人くらいだ。

ましてや、まだイーニシュフェルト魔導学院にも入っていない小学生が、魔導人形に掠り傷をつけるとは。

これは才能ありだ。

「凄いですね。うちの生徒でも、魔導人形に傷をつけられるようになるのは、精々二年生以降ですよ。余程才能があると見えます」

「ほ、本当ですかっ?」

「えぇ。あなた…もしや、魔導師養成コースのある小学校に?」

「は、はい。王都にある私立小学校の、魔導師育成コースに通っています」

成程、得心が行った。

ルーデュニア聖王国は、特に魔法の発達している国だ。

中・高校だけではなく、小学校でも、魔導師養成課程を備えている学校もある。

魔導師養成課程がある学校は、私立小学校が多いですね。

そういう学校に通っている生徒は、今現在も、学校で魔法の勉強をしている訳だから。

当然、ただ我流で魔法を勉強している生徒よりは、魔法の扱いに長けている。

成程、それで。