神殺しのクロノスタシスⅣ

「えー、この体験授業では、実際にイーニシュフェルト魔導学院の生徒達が使っている魔導人形を使ってもらいます」

と、僕はいつも授業で使っている、魔導人形を指差した。

「普段の授業でも、イーニシュフェルト魔導学院の生徒は、基本的にこの魔導人形に向かって魔法を打っておりまして…」

まぁ、たまに例外もあるけれど。

羽久さん曰く、時魔法の実技授業のときは、振り子みたいな道具を使うらしいし。

あと、実技授業でも、対戦形式の実技のときは、魔導人形の出番はない。

当たり前だけど。

しかし今回は、オープンスクールの体験授業。

まさか、いきなり対戦形式で授業を行う訳にもいかず。

今回は、素直に魔導人形相手に、魔法を使ってもらう。

ちなみにこの訓練場には、ボランティアとして、イーニシュフェルト魔導学院の生徒が数名、待機している。

万が一、体験授業希望者の使った魔法が、明後日の方向に逸れてしまったり。

予想以上に威力が大きかった場合、周囲への被害を防ぐ為である。

僕は読心魔法で、体験授業希望者の使う魔法の種類を読める上に。

相手は、まだ小学生の子供。

何処ぞの、ジャマ王国の子供ならいざ知らず。

ルーデュニア聖王国育ちの子供に、魔導人形を粉砕するほどの魔法が使える子供は、まぁほぼいないだろう。

全くいないだろう、とまでは言わないけど。

午前の部を見たところ、そんな事故は起きそうもなかったし。

まぁアレですよ。いざとなったら。

必殺の、僕の肉壁で守るんで。大丈夫大丈夫。

そんな訳なので、気を取り直して。

「今回も、この魔導人形に向かって、皆さんお得意の魔法を使ってみてください」

僕がそう指示すると、体験授業希望者達の顔に緊張が見えた。

いきなり、名門校のイケメンカリスマ教師の前で、自分の魔法を見せるなんて。

当然、緊張もするでしょうが…。

仕方ないですね。

大丈夫、僕も存分に、あなた方の心の中身を見せてもらいますので。

「じゃ、一人ずつどうぞ」

僕は、希望者一人ずつの名前を読み上げ。

順番に、魔法を見せてもらうことにした。