こんなときには。

「イレース!ちょっとシルナを止め、」

「では、私は授業計画を変更しなければなりませんので、これで失礼します」

無情な鬼教官は、俺を見なかったことにして、さっさと退室。

はっ…く、じょうな…!

しかし、教師仲間はまだいる。

「ナジュ!シルナを何とか、」

「さ〜て!僕は学生寮に行って、生徒達に愛想振り撒いて、生徒からの株を上昇させてきますかね〜」

読心魔法教師は、半笑いで颯爽と、学院長室から出ていった。

分かっていた。あいつには特に期待していない。

でも、俺にはまだ本命がいる。

「天音!お前は俺を見捨てないよな!?」

「えっ…えぇと…」
 
天音は、俺に助けを求められ。

俺の顔と、鬼気迫っているシルナの顔を順番に見比べ。

「…その、が、頑張ってください」

俺を諦めやがった。

天音…お前だけは助けてくれると、信じていたんだぞ俺は…。

かくなる上は。

もう、教師仲間は頼れない。こうなったら、生徒でも良いから頼る。

「令月、すぐり!お前らからも何とか…」

と、二人の元暗殺者組に声をかけようとしたら。

さっきまで、確かにそこにいたはずの二人は。

いつの間にか、消えていなくなっていた。

そして、窓が開け放たれ、ひらひらとカーテンが舞っていた。

あ、あいつらぁぁぁ…!!

危機察知能力と逃げ足が、暗殺者のそれ。

二人仲良く逃げ出しやがったな。おのれ。

そして残されたのは、俺とシルナのみ。

最早、俺に逃げ場は無し。

「さぁ行こう羽久!」

「…畜生…」

全員、後で覚えてろよ。