空の表紙 −天上のエクレシア−




−アクアスは決めた。



どっちにしろ戦わねばならない

このまま公園まで行って
そこにも敵がいたら
勝算は無いかもしれない
それを感じさせる
得体のしれない空気が
追っ手にはあった



一度ダッシュする

そして適当な十字路を探すと
そこで止まった

――腰を落として剣を抜く。



「出て来い!何者だ!!」


そのアクアスの叫びに
黒い影が音も無く
物陰から姿を現わす


(まさか 闇兵…?


手首がゆるく震える


軍生粋の騎士を集めた
フリート隊長率いる
白亜王室近衛部隊と呼ばれる集団

それの裏にあたる集団
それが闇鋼鐵暗殺部隊だ

『在る』と言う話は聞いてた
でも、見た事は無かった




−闇色の兜の奥から声


『目標は…貴様では無い…
去ね。』


「俺…の目標はあんただ。」

そう言い返し
ゴクリと唾を飲み込む。


それでも
複数を相手にしての戦い方なら
俺だって熟知してる
フリート隊長から
一本取った事だってある

…俺なら何とかなる筈だ


「…せやあっ!!」


掛け声を挙げて
一気に相手の懐に飛び込む
闇は両剣を交差してそれを止める
攻防が続き向こう太刀筋も少し掴めた



(行けるかもしれない…!


ところが
戦闘が始まってすぐ
他の黒兵はバラバラと駆出して
行ってしまった。


( え…

何故だ!?こういう場合、
皆一斉に俺に向かって来る筈だろう!?

焦るアクアスの心を
闇が見透かした様に言う


『…言ったろう…目標は貴様では無い…』


「うわっ!!?」


右腕の脇腹を
黒い剣が走った様に見える
少し掠った
え。これヤバイのか?

速い
なんだこれ
今までのは本気じゃなかったのか?!


自分の血の気が引く音を
初めて聞いた

辛うじて身を引き回しながら避けたが
左肩後方を
相手に思いきり向けてしまう

慌てて左足で食い縛ったが
剣を道にぶつけてバランスを崩してしまった



―闇い剣光が目の前に走る