鎖で設錠され
ひとつしか無い扉に
裸足で歩み寄る。
「だれ?」
―――返事はない。
「こっちこっち。
あ!やっぱ見ない方がいいかも…
うわ!!」
言うより早く
彼女は窓に連なる鉄格子に
顔を押しつけ、
じーっと声の主を見て居る
「けが してる?」
「え。ううんー
なんで?あ、
背中から色々突き出てるからか
一応これ開いて飛べるようになってるんだー。」
「ちがう。顔。目玉赤いよ
ほほから血が出てる。…あれ
これ模様?」
「模様、だね。
ちょっと頑張ったから
翼以外のいろんなのも
全部出ちゃった。
だからちょっと休ませてね。」
それだけ言うと
大きく息を吐き、
懐から青い粒を取り出すと
そのまま苦しそうに口の中へ放り込む。
突き出た桟に腰掛け
鉄柵に頭を預けた
薄く目を開くと水差しが鼻先に
そのまま口を付けると
サリュは少しづつ
飲みやすい様に傾けてくれる
「あなた。ドラキュラアイスみたい。」
いきなり氷菓子扱いされた男は
水を吹き出す
「な!?」
「しらない?
ドラキュラアイス。
まっくろなアイスで中が真っ赤なの。」
「し、しってるけども」
苦笑しながら体勢を整えると
彼は彼女が片手に掴んだままの
ローブごと引き
少し睨みながら、ゆっくりと彼女に顔を寄せる
紅い瞳の光彩が細くなり
−声色も低く変わった


