空の表紙 −天上のエクレシア−


サリュはこの日
朝、早くから目が覚めた

少しいつもより暑いのかもしれない

重いカーテンを開き窓を開ける


太い格子越しから
遥か見下ろす森は、相変わらず霧深く
鳥が通過するだけ


青黒く晴れた空には雲ひとつ無かった


「グレー。」


ここに来てから
慰めにと差し入れられた
この地域に住むという愛玩動物


いつ名前を呼んでも
来た例は無かったのだけれど。


小動物だけが通れる隙間があるらしく
それを使って彼は
森と塔の天辺とを
自由に行き来しているらしい


たまに咥えて来て
放置されたままの木の実は
瓶詰めにして飾ってある


なんとなくいつもの様に
作りかけの服を手に取って
膝に置く

黒いローブに精密なビーズ画が
全体にあしらってあり
もうひと刺しで完成する


「すごいねー」


え?


人の声。