「お戻り下さい!
サリュ様ああ!」
身の丈1M程の
小さなかたまりが
石造りのトンネルの暗闇の中で
慌てている
先を進む少女を
止めようとしている様だが、
彼女に聞く気は一切無い様だ
「かえっていいよ。ユピ。
あたしひとりでへいき。」
その言葉に彼はガーン!と
涙目になる
「でもでもでも!
私は姫様仕えのナイトです!
無事お守りするのが役目…って
…姫様…聞ぃて下さいよぅ…ょぅ」
石造りの壁に
ユピの声だけが無情にコダマする…
無言で歩き続ける
サリュの足には
靴ズレが出来ている
こんなに長い距離を歩いたのは
生まれて初めてだ
サリュ・キィ・ロヴォス
皆殺にされたと伝えられている
前国王一家の末娘だ
− 自分が幽閉されているらしい
というのは気が付いていた
けれど元々
外に出る事を好まなかったし
部屋でずっと
刺繍や縫い物をやっていれば
それで良かった。でも…
赤い瞳のあの人は来いと言った
もし自分の元に辿り着けたら、
「あの星、くれるって。」


