「ありがとーございましたー!!」
門前で
後ろからならズロースが
見えてしまうくらい
勢い良くおじぎすると
ルビナは馬車に飛び乗った
走り出そうとした時
一人のメイドが駆け寄って来た
「イザベラ様が、これをルビナさんへと」
黄色い
薔薇の造花が付いたリボンに結ばれた
レースの包み
「わ!ボンボンだ!」
ご機嫌に走り出しながら
メイドに手を振る
急がなくちゃ。
ギン親方も心配してるだろう
いくつかの道標を走り抜け
車輪の軋みが収まり出す
赤く染まる空の下
城の天辺に月が浮かんでいた
「町だ!」
外門には
松明の火が煌煌とゆらめき
来た時と同じ様に証書を見せる
行ってよし!と
号令を掛ける兵士の横に
松明にきらりと光る頭があった
「白兎さんだ!」
声に『ぬ』と振返る
「おー おかえりー
お疲れさま…ありゃ
今日はなーんも花積んでないんだ
一本買いたかったのにー。
今日はどこへ配達だったの?」
「ただいまっ!ごめん!
ピッキーノさんち行って来てさ!」
大変だったんだよ…と言いそうになって
慌てて口を押さえる
「お。ならアクアスと会ったんだねー。久しぶりだったでしょう」
「へ?!アクアスも居たの?!」
「うん。ちょっとお使い頼まれたみたい
会わなかった?」
「う、うん」
「そっかそっかー。
んじゃま、もう遅いし、
取敢えずお疲れー。まったねい」
「またねー!
白兎さんもがんばってねー!」
大きな体でポーズし
投げキスする姿に、
ルビナは大笑いしながら手を振る
周りの兵士も愉快そうに笑い合った
白兎は城仕えの高僧だが、
度々町に出て来ては
酒を呑んだりしている
ギン親方とは大の仲良しで
お互い誕生日には
一晩中酒を酌み交わし
翌日店内の惨状を
ルビナがこっぴどく叱った事もある
移民のルビナ一家の証書を
出してくれたのも白兎だった


