歌が鳴る間
ルビナは少し離れた所で
あの吟游詩人に目を奪われていた
(お、お人形?!)
あまりに凝視したせいなのか
その竪琴の主はこちらを振り向く
― 微笑んだ。と思った。
しかしすぐに瞳を閉じ竪琴を爪弾く
…それが何だかとてもショックで、
一瞬目が眩む
(…なんだ?あたし…)
そしてあの唄が始まったのだ。
(唄)
…回るのは土の小鳥…
水に描いた絵を持って線で結ぶ
…そして炎は燃えるよ
氷の群青の中で……
なぞなぞみたいな唄だな。
と思った
しかも水に絵を描くとか
氷の中で火が燃えるとか
有り得ない事ばっかり
―そしたらいきなりピッキーノさんが剣抜いて…
その後は皆ものすごい勢いで逃げ出し
自分も波に押されて雨がいっぱい降って来て…。
「あの!ピッキーノさん大丈夫ですか?!」
「ああ。
医師の薬で眠らせた。
…全く何に対してあんなに怒ったんだか。
あの冒険記はな、
メロディーはオリジナルだったし
内容も若干アレンジされていたが、
話自体は、かなり有名な物なんだ。
前国王ー現国王の兄君が、
ある蛮賊を粛正しに行った時の話でな。
大戦の少し前の話だから
新しい吟歌だし人気もある。
哀しくも先の大戦で
乱に乗じて攻め入って来た隣国の為に
御霊となってしまわれたが
その雄姿を偲ぶ為
建国祭の催し物などでは
オペラになったりもしているんだよ
現王政への不逞と言う意見もあるが
仲の良ろしかった御兄弟ゆえ
国王も許されておられるんだろう」
「はい!うちも前
家族皆でここに来た時
丁度建国祭だったんですよ!
弟達と一緒にその日は
町中まわって…
その時ビオラ弾きのおじいちゃんが
歌っているのを聞きました!
ただ…」
「ただ?」


