―――――――城から飛ぶ

マドゥー邸を駆け回ると
波動のおかしな場所を見つけた


「何でこんなとこに転送輪が?!」


地下に降りると闇が上がって来た
―据えた匂い

指で印を斬り
前へ進んで行く

次第に濃い闇に包まれて
視界が利かなくなって来る

その中にも
更に濃い闇の穴があり、
恰も墨の中を進んでいる様だ

と、
足元にいきなり空洞が移動して来て
白兎はその穴に落ちてしまった


「うおっ!?」


落下に耐えようと
受け身を取ったのだが
ただ歩いていた様に何処かに出た

手の平から光の玉を出し
辺りを照らす


――生き物の体内の様に蠢く壁

見た事の無い文字が書かれた
白い岩のレリーフ

そこには
女神が描かれている訳でも無く
宝石の横に、二つの翼がある物だった

細かい、飾り枠組みの入口

さほど大きくは無いそこを
少しだけ身を屈めてくぐる


「…ぬお?!なんじゃこりゃー!」


小部屋上座の水盤は崩れ落ち
床一面を濡らしている

そこには多数の人々が重なり
眠る様に倒れていた

側に残る二つの
何かが抜け出した様な殻達は
虹が砕けたように割れていた

中央祭壇の床には
見た事無い方式の転送輪みたいな物
どこと無く
教会のチェンバロに似ていた


側には
ガラさんが倒れて居て
慌てて近付こうとしたが
硝子みたいな壁があって
中に入れない


「フリートも
ピッキーノも居ない…」


―そして少女の泣き声―

声は
倒れた黒い影の側からだった

「ぬ!」

足元が滑った

「……シロウサおじさん…?」

「なんだこりゃ?!血か?!」

「お…お願い…
ノアールを助けて…」


闇の中目を凝らす


「……お前…もしかしてロルカか?!」