空の表紙 −天上のエクレシア−





―遥か昔、傍若な蛮族を制圧しようとした勇敢な王族ありき―



激しい戦闘
圧倒的不利となっても
長老が最後まで侵入を拒んだ
彼らの聖地があった

華々しい制圧後
聖地の森から険しい谷を降り
洞窟へ入る

するとそこには…
この世の物とは
思えぬ生物達が巣喰い、
進む程見事な宝石が
塔の様に建ち並ぶ信じられない
世界が広がっていたのだ



――軽快だった竪琴は
半音を伴って不思議な旋律を奏で始める


生粋の勇者達を送り込み
魔獣共を討伐
大きな扉の前に辿り着くが
開かない


彫り込まれた未知の文字が
手掛かりだろう


生き残った長老の娘を連れて来ると
彼女は歌い出した


(唄)…
…回るのは土の小鳥…
水に描いた絵を持って線で結ぶ
…そして炎は燃えるよ
氷の群青の中で……



「ふむ…これからどうなるのか」


期待に頬を上気させるイザベラの横に居た
ピッキーノの足がワナワナと震え出した。


「…? どうしたのだ。ピッキーノ」


横を向くとアクアスまでもが
顔色を変えている


「この歌…
ジークがいなくなる前歌ってた…。」



瞬間。
目を血走らせたピッキーノが
破裂した様にオデッセイに向かって
切り掛かった



「オデッセーーイ!!
その唄を何故貴様が知っている!!」


金属の強い衝撃音と悲鳴が庭園内に響く


バラン…と弦の切れる音

ピッキーノの剣を
竪琴で防いだオデッセイは身を翻し
緑の瞳で微笑すると、木の上に飛ぶ



彼はいつの間にか
あの包みを抱えていた



空は急にかき曇り、雷鳴が轟く―



激しい雨に打たれ
もう誰も居ない木の上を
茫然と見つめながらアクアスは
立ち尽くしていた――。