空の表紙 −天上のエクレシア−




―――ジークが去った後

アクアスは
フリートに剣を
向けていた

先程のジークとの競り合いで
フリートの身体も
あちこち潰されているが


体中が
ガタガタと震えた
闇兵等など比では無い―――



『…一本取りに来ますか?
アクアス』

―それはいつもの
試合前の決まり文句

斜めにこちらを向いて
銀の片手剣をスラリと差し出した


アクアスは
両手で
剣を目の前に構え…

途端に、フリートが一歩、前に出た

もう横に居る

急いで後ろへ逃れる

フリートの剣はアクアスの首の横

慌てて剣の柄近くで
それを拒む

交差した箇所は火花をあげる

アクアスは
滝の様な汗を流す

上から斬ってみても
跳びながら振り払ってみても
とても簡単に
フリートは手首だけを動かして
一切、近付かせない


突き付けられた切っ先は
既に自分を一突きにしている―

そんな感覚に襲われて
頭の中心が
ぐらぐらとして来た


― 水色の光彩は
もう閉じている


だんだん足の感覚が無くなって
手首から肩まで麻痺が始まる

たいした時間では無い

だが
自分の喉から、

絞められて行く
ガチョウの様な音が聞こえて来た

その時、黒い影が
何処かへ歩いて行くのが見えた


……黒い大きな羽


それを見ていた一瞬を衝かれて
アクアスの剣は、高く飛ばされ

フリートの剣の平で
気絶する程地面に叩き付けられた

強く胸を打って
呼吸が出来ず
遠い意識の中でパニックになる

そこをまた上に返されて
腹を蹴られる
目が充血して来て
何か、吐いた

そして胸倉を掴まれ、引きずられる



『…すぐ他に気を取られる
それが君の悪い癖だ』



―川に流した葉の船みたいに
何処かにぶつかりながら
やりっ放しの自分の足先を見ながら


あの訓練の時の一本は
『取らせてくれていたのだ』と


悟った