空の表紙 −天上のエクレシア−

「狐狩りには早いなピッキーノ

しかも狐と思い込み追立てた所が、
実はオオカミだったとしたら
手酷い目に会うのは貴様だぞ?」


アクアスの横に立つ
乗馬服の小柄な貴婦人は
アクアスの包みを受取ると
そのままピッキーノに向かって
差し出した



「イザベラじゃないか!
いつ游学から帰って来たんだ?!」


騎士の様に会釈して
イザベラの手を取り接吻する



「昨日な
勝手に入らせてもらったぞ
若干…屋敷の中を迷ったので
喉が乾いた…。
少年。フリート様の使いか?
包みからあの方の香りがした」


「はい!」


彼女は満足そうに笑うと
テーブルの方へ足を進めた


そしてピッキーノが腕を広げる

「皆に紹介しよう!
イザベラはマドゥー家とは
遠縁にあたる男爵令嬢だ
最近まで見識を深める為にと
隣国に一年程留学に行っていた」



「姫 華麗な助太刀。
お見事でした」



オデッセイはそう言うと同時に
もうグラスをイザベラの手に
持たせていた。


「ふん。
気の利く男は嫌いじゃない
しかもお前…美しいな。
名は何と言う?」


「オデッセイと。」


「ふふ。かの叙事詩か。
わたくしは絵をやるのでな。
あれを題材に数枚描いた事がある。
…してお前は何を語る?」



「…では…
ある宝を隠した冒険家の唄などは
どうでしょう?」


「おお!いいじゃないか!」


その声に促される様に
人々も周りに集まり出す



――細い旋律――

穏やかな竪琴の音と共に
物語は始まる