空の表紙 −天上のエクレシア−



「ほらほら
噴水の女神ちゃん指差してる
白い羽飾りの人 タイツ君。」


大きく上を仰ぐ

木の上に声の主が居るらしいのだが姿が見えない


強い午後の木漏れ日に
目と首が痛くなって、一度下を向いた


噴水の方を見る
と、確かにこれでもかと
デカい羽根飾りの帽子が
賑わいの中心に居た
「あ…ありがとう…うわっ!?!」



軽い風圧を感じた次には
真正面に顔があった


「う、上にいませんでした?!?」


いきなりの登場より
もっと驚いたのは


− 目前の人物の容姿にだった

声は確かに男の物なのだが…


黒に金糸のギリシャ風ローブ
陶器の様な白い肌
腰まで伸びた漆黒の髪は
更々と風にそよいでいる



唖然とするアクアスに
緑の瞳は優しく笑い掛けると
いきなり腕を取って
中心に歩き出し始めた


「それ渡したいんでしょ?
一緒に行ったげるよー」

「あ、え」


その時羽飾りの主が声を上げる


「やあやあ!!
どこに行っていたんだい
オデッセイ君!
早くご自慢の声を
もっと披露してくれたまえよ!

…ん?君は?」


「え …」


ピッキーノは
アクアスの上から下まで眺め回し
フゥ。と息を吐くと
サッと両手を広げた



「ふむふむ。
ちょっと言わせてくれ
僕は君と面識が無いねえ
これでも記憶力は良い方なんだよ。


今回は親しい間柄の人間しか
呼んでいない筈だったんだが…


どこで会ったのかなあ
城かね?
どこかのお屋敷でのパーティーかね?
それとも僕の服を仕立てる
服屋ででも住所を見たのかね?」


矢継ぎ早に言われ
アクアスは返答するタイミングがない
周りもそれに同調して、
ヒソヒソくすくす彼についての
算段を始めた



とにかくこれを渡してここから帰ろう!

包みを勢い良くピッキーノに
手渡そうとするが
わざと身を逸されてしまう

そのやりとりが数回繰り返された後

二人の間にスッとムチが入った