「はぁ?なに、俺のこと疑ってるわけ?」
千紘の声がワントーン下がり、少し怒っているのが伝わってくる。
だけど私の口は止まらなかった。
「だって、こないだ見ちゃったんだもん。可愛い女の子と仲良くしてるところ……」
「……」
千紘はありえないという表情をしている。
私だってわかってる。あの時の千紘はファンの子に愛想良くしていただけ。
たぶん、千紘は身に覚えがないと思っているのだろう。
ファンと話している時の千紘は優しい王子様だから。
私の前で出す素は、ちょっと強引なところもあるけれど、メディアやファンの前では一切それを出さない。
「千紘の周りには可愛い子いっぱいいるでしょ?本当は私なんかよりもそっちに行きたいんじゃない?」
ハッとしたときにはもう遅かった。部屋の中の空気が凍る。
千紘にとってはただのファンサービスだったとわかっていたのに、女の子から好意を向けられているのに嫉妬し、前からモヤモヤしていた。



