「俺は結乃に持ってて欲しいんだ。まさかホームラン打てるとは思っていなかったけど、昨日監督からスタメンだと言われた時から、結乃に言いたいことがあったんだ」
やはり、千紘は前もってスタメンだと知らされていたらしい。
しかも、私に言いたいことがあるという理由だけで内緒にしていた。
今、千紘が考えていることなんて手に取るように分かるけれど、私は知らないフリをして聞きに徹する。
わざと私に言わずにサプライズにしたのはその理由があるからだろう。
おかげで、代打で出るかなとか考えていた私はとてもびっくりさせられた。
ゴクリと唾を飲み込んで待っていると、千紘は真剣に私の目を見つめて言った。
「俺、やっぱりお前なしじゃいられねぇ……だから結乃――」
真剣で、それでいて少し甘く優しい瞳にドキッとする。
今までにないくらい緊張しているし、私の心臓はバクバク鳴っていた。
そして、千紘はそれを無視するかのように自信満々に言い放つ。



