私は一瞬も見逃すまいと、試合が始まってから必死に千紘のプレーを見つめる。
さすがに、初めは少し緊張している様子だったけれど、先輩選手に声をかけられてすぐに最近のいつも通りのプレーに戻った。
守備ではファインプレーを魅せて、2回目の打席では力強い2塁打を放った。
そのプレーを見る度に、球場内がわぁっと盛り上がる。
そして、9回裏の最後の打席――同点の1アウト。
途中で交代することもなく出続けた千紘は、疲れを見せない真剣な表情で打席に立っていた。
千紘の応援歌が流れ、太鼓のリズムとトランペットの音に合わせてたくさんの人が選手テーマを口ずさむ。
もちろん私も、周りを気にせずに応援していた。
「千紘、いけー!」
私がそう言った次の瞬間、カンッとバットとボールがぶつかる打球音が鳴る。
打ち込まれたボールは、上がりすぎず下がりすぎず、綺麗なを円描いてレフトスタンドに吸い込まれた。
その瞬間、わぁっと今日一番の歓声が響く。



