「ん、だめ……」



軽く胸を押しながら離れようとしたのに、千紘の手が緩むことはなかった。

むしろ、緩むどころか、その手は私のお腹のあたりから服の中に侵入してこようとしている。


まだ真昼間だ。お酒も入っていないのに、こんな時間から流れに身を任せてしまうわけにはいかない。


今度は軽くではなく、思い切りその手を拒んだ。



「これ以上はだめ!触るの禁止!」



顔を横に向けて、上がった息を整えながら少し身体を離す。

ドキドキしすぎて、おかしくなりそうだ。



「いいじゃん、最近全然イチャイチャしてないし」


「そ、そういう問題じゃない!」


「誰にも見られてないだろ?それに、そんな真っ赤な顔して言われても、説得力ねぇよ」



千紘はそう言って、また私を引き寄せる。

そもそも身長差が20センチ以上ある上に、プロとして身体を鍛えている千紘に、力で勝てるわけがない。


本気で押さえつけられたら、私が逃げられないことなんてわかっているだろう。