千紘にもらっている席はホーム球場のものだけだし、そもそも地方の球場には仕事もあるし日程的にも行くことができない。
「タイミングが合わなすぎる……」
だけど、直接見ることは叶わなくても、噂はすぐに私にも届いていた。
私のスマホには速報が来るようになっているし、千紘からもちゃんと連絡がくる。
『1打席で犠牲フライだった』
『今日は6回から最後まで出て2塁打打った』
そんな素っ気ないものだったけれど、必要最低限なその連絡は、毎日届いた。
もちろんその情報だけではなく、仕事が終わり、急いで家に帰った私はすぐにテレビを付けて野球中継を繋ぐ。
だから、画面越しにしっかりとその姿を確認していた。
千紘はその言葉の通り、あの日以降何かが吹っ切れたように余計な力が抜けてどんどん打率が上がっていったのだ。
もちろん、千紘からの報告にあるように6回以降に代打で出場することも増えている。



