さらに怒るかと思ったけれど、図星をつかれたからか、千紘は不貞腐れたようにそう言って私の腕から抜け出そうとするのをやめた。
身体の力を抜いた千紘は、いつもより自信がなくなっている。
そんな千紘に、私は優しく言い聞かせるように言った。
「ねぇ、あの時の言葉忘れたの?」
「はぁ?」
私は絶対に忘れない言葉だけれど、今の千紘には見当がついていないのだろう。
全く分からないというような声を出した。
「私がいれば千紘は勝てるんでしょ?」
「……っ!?」
いざ自分で口にしてみると、思っていたより恥ずかしい。だけど、あの時の千紘はこれを私に言ったのだ。
千紘が息をのんだのが、その背中から伝わってきた。
私のせいで調子を崩した千紘を、今度は私の力で取り戻したい。
その想いだけで、千紘の反応を待たずに続きを一息で言い切った。



