千紘が、私との結婚を全く考えていないなんてはずがなかったのに。
勢いでプロポーズしてくれないなんて、言うべきではなかった。
今までなら、すんなりとはいかなくてもこれで仲直りすることができていた。
だけど今回は――。
「今、近寄んな。さっさと帰れよ」
余程こたえているのだろう。顔を逸らして私を引き剥がそうとしてくる。
だけど、これは――本気で私を嫌がってのことではない。
たぶん、千紘が自分自身を責めていて、思うように結果も残せていない今、最高に機嫌が悪いからだ。
言われてはいないけれど、このままだと、私に八つ当たりしてしまうからと思っているのだと想像ができる。
私に八つ当たりしたくないという気持ちも分かるけれど、そんなに格好つけないで欲しい。
ちゃんと私にも思っていることを言って欲しいのに……。
千紘は私の気持ちをわかっていない。



