「さすがに、アレはなかった……言うつもりなんかなかったのに――」



今更後悔しても、一度口に出してしまったものは変えられない。


プロポーズなんて急かしたら、千紘が焦るのは分かってたのに。

私、プロの選手の彼女として最低なことをした……。プレーに影響が出ていたらどうしよう。


そもそも、私が理学療法士の仕事を選んだのは、いつか千紘をサポートするためでもあった。


怪我をした時のリハビリはもちろん、強がって軽い怪我はそのままにしてしまう千紘を見抜くために、知識をつけたかったのだ。


プロになった今は、怪我をしたらちゃんと報告もしているようだけど、それでも心配してしまう。


サポートをしたくて、支えたくて進んだ道なのに、全く別のことで千紘に悪影響を与えてどうするのだと私は後悔していた。


今日の試合はいつも通りのスタメンで、そこに千紘の名前はない。


試合が始まり、応援しながらも私は千紘のことを考えてしまう。