「ほんの少しの時間でいい。騒ぎになるとこのお化け屋敷が封鎖されてしまうかもしれないんだ」


タイセイはそう言い、まだひとりだけ眠っているカズトモの体へ視線を向けた。


それを見て誰もが息を飲む。


みんな自分のことで精一杯で、まだ目覚めていない人がいることなんて気がついていなかったのだ。


「どうしてその子はまだ寝てるの?」


女性が不思議そうな顔を向けてくる。


「それは……事情があって、部屋から出られないでいるんだ」


タイセイの言葉に息を飲んだのはコノミだった。


ミチオも目を見開いている。


「出られないってどういうこと?」


この質問はコノミからだった。


友人に嘘をつくのは嫌だったけれど、混乱を防ぐために今は言えない。


私はコノミへ向けて目配せをした。