空調の音だけがやけに大きく鼓膜を揺さぶり、それが気分を重たくしていく。


真っ黒な通路は延々と伸びていて、どこまでも果がないように見えて足がすくんだ。


さっきまでタイセイが一緒にいたけれど、今はひとりになってしまったからだ。


自分の心がそう見せているんだ。


自分自身にそう言い聞かせても、永遠に続く闇はやはり恐ろしくてなかなか足が前に出ていかない。


ゆっくり、ゆっくりと歩いていたとき不意に後方に人の気配を感じた。


もしかしてタイセイが心配してついてきてくれたのかもしれない!


不安が膨れ上がっているから、そんな期待が浮かんできてしまった。


「タイセイ?」


聞きながら振り向き、思わず笑顔を浮かべる。


しかし、その笑顔は振り向いた瞬間消え去った。


そこに立っていたのはカマ男だったのだ。


ただ、今はもうカマは持っておらず、仮面はひどくひび割れて顔の下半分が見えてしまっている。


魂たちからヒドイ暴力を受けたようで、服はビリビリに裂けて覗いた皮膚は青あざになっている。