影がない事に気付かないまま、空は俺の家に入った。




空は本当に自分が死んだ事を知らないのか‥




そもそも本当に彼女は空なのか‥？




だとしたら、生き返ったのか？




俺の中にはいくつもの疑問があった。




でも今はそれよりも空に会えた事が嬉しい。




この喜びは‥




そう長くは続かない。




わかっていた。




空はどこにでもいる女子高生だ。




俺の前で、慌ただしく携帯を探し始めた。




「‥携帯‥？」




俺は焦った。




携帯なんかあるはずがない。




携帯どころか‥

荷物だってもう何一つないだろう。




空は亡くなっているんだから。




俺の焦った顔を見て、空の顔も曇った。




昔からそうだ。




空は泣かない強い子供。




大人はみんなそう言う。




けれど本当は違う。



空は人一倍弱くて傷つきやすい。




俺にはいつも本当の自分を見せてくれる。




だから分かるんだ。




頼むから‥




頼むからそんな悲しい顔しないでくれ。