空は本当になにも分かっていないみたいだ。




引っ越した事も


自分が死んだという事さえも。




こんな事が‥




現実に起こるなんて‥




俺が空を見る怯えた目に、動揺を隠せないでいた空。




何がどうなっているんだ?




死んだ人間が目の前にいる‥




でも




目の前にいる彼女は




間違いなく空だ。




誰がこんな事信じるのだろう‥




家に帰ろうとする空に、俺は何て言えばいいのか分からない。




《空は一ヶ月前に死んだよ》




そんな事‥




言えない。


言いたくない。




だから俺は考えた。




「入院してたんだよ」




事故にあって入院して、一ヶ月間記憶がなかったと空に言った。




その間に空の両親が引っ越した。




そんなめちゃくちゃな嘘を空についた。




空は空き家になった自分の家を呆然と眺めた。




そして‥




「アタシ‥気付いたら交差点にいたんだ‥」




俺に背中を向けたまま、ぽつりとそう呟く。




誰も信じないと思う。




目の前に亡くなった人がいるなんて‥




でも‥




誰も信じなくてもいい。



俺は君を信じるから。