アタシは気がつくと荷物なんて一つも持ってなかった。




携帯どころかバッグも‥




「‥携帯‥?」




新がなぜか焦っている。




今日の新はやっぱりどこかおかしい‥




「記憶戻ったって裕紀君にも杏奈にもメールしたいんだ」




早く伝えたいよ。




「‥やめとけよ」




‥え?




新の目が泳ぐ。




「‥何で?」




いつもなら‥


もっと笑ってくれてたのに‥




「空‥裕紀と杏奈はもういないよ‥」




‥?




こぶしを力いっぱい握りしめ、下を向いた新の目には‥




涙でいっぱいになっていた。




何がどうなってるの?




「いない‥って?」




アタシは昨日まで杏奈と一緒だと思っていた。




でも‥




そうじゃなかった。




一ヶ月もの間意識がなかっアタシ‥




その間に‥




何が起きていたの?




「とにかく‥体調よくなるまで俺んちにいろよ」




体調なんて悪くない。


アタシは元気なのに‥




なのに新は‥


アタシに目も合わせてくれない。




「ちょっと‥外の空気吸ってくるよ」




アタシはその場にいられなくなり立ち上がった。