染野紫杏は、ごく普通の一般家庭のもとに生まれた。

両親はとても仲が良く、子供ができたと聞いた時はとても喜んだそうだ。



ーーそう、俺が生まれるまでは。

好きと嫌いは紙一重。

好きという感情が大きければ大きいほど、裏切られた時のダメージは嫌いに大きく変換されて返ってくるはずだ。


両親は父も母も純日本人で、黒髪に黒い瞳。

和を表したような人だった。

…そんな二人のもとに生まれたのは、赤い瞳を持った男の子。

その日から、家庭は崩れた。



「赤い目の子供なんておかしいだろ…、不倫したのかよ」

「不倫なんかじゃないわ、本当よ…!」



冷えたお父さんの疑いの声に、お母さんの必死な訴え。

少し考えてみれば色素が薄いだけとわかるのに。

目の前のことに考えることを捨ててしまったのだろうか。

俺が物心ついたときにはもう、家族関係は最悪だった。

香水の匂いを撒き散らして帰ってくるお父さんと、毎日のように泣いているお母さん。