絆創膏も、包帯も巻かないで放置してたら菌が入ってしまうかもしれない。

そしたら、大変だよ…。



「……」




彼らしからぬ無言で腕を出す。

想像以上に深い傷に、びっくりしてしまう。

できるだけ痛くないように、手当てをし、包帯を巻いていく。



「大丈夫?痛くないかな?」

「……うん、大丈夫」



ありがとう、と掠れた声でもらす紫杏くん。

微に見えた表情が、とても儚くて。

我を忘れて、見惚れてしまう。


けれど、それもほんの一瞬の出来事。



「花澄ちゃん、どうかした?」



ボーッとする私に、不思議そうに問う紫杏くん。

儚い表情をした彼は、もうそこにはいなかった。



「なんでもないよ…!」



ふるふると首を横に振って、包帯を巻く。

女の人とは違う、ガッシリとした腕に緊張しながら巻いて、完成する。



「紫杏くん、できたよ…!」

「……」



綺麗にできたんじゃないかなって思うんだけど、どうだろう…?

不安になって紫杏くんを見てみれば、嬉しそうなのに、どこか苦い顔をしていて。

ギュッと胸が締め付けられる。



「紫杏くん、どうしたの?大丈夫…?」



ポスッと私の肩に顔を押し付けた紫杏くん。




「……俺、親にも手当てとかされたことないんだ」



何を言えばいいかわからなくて、口をつぐむ。

きっと、紫杏くんにとって心の内にある部分を、知られたくないことを話そうとしてくれている気がして。

次の言葉に耳を傾けた。