「…なんで俺の家に?」



怪訝そうな表情をみせる紫杏くん。

なんで、もなにも。



「傷、深いよね?服に血もついてるよ。
…手当てしなくちゃ、菌が入っちゃうし。痛いでしょ?」

「……え?」

「ごめんね、家の道がなんとなくしか覚えてなくて。案内してもらっていいかな?」

「……」



呆然としている紫杏くん。

驚いてるというより、戸惑ってる…?



「紫杏くん…?」

「…傷、痛くないし、こんなのよくあることだから。気にしないで」



痛くないなんて、嘘だ。

刃物に刺されたかのように深い傷は、まだ生々しくて痛そう。

紫杏くんが、傷ついたままなのは嫌だ。




「紫杏くんの家に案内してくれるまで、帰らないよ」



きっと、私の家に着いたらそのまま帰ってしまうだろうし、溜まり場に引き返すのは危険みたいだから。

紫杏くんの家で処置するしかない。

自己満だとしても、手当てくらいはさせてほしい。



「…案内するから、着いてきて」




弱々しい声でそう告げて、案内してくれる紫杏くん。

歩いて行くに連れて人通りが少なくなる。

…溜まり場から紫杏くんの家まで近くて、数分でついた。

すぐに家の中に上がらせてもらい、救急箱を貸してもらう。



「腕の傷、みせてくれる?」

「…大丈夫だよ、止血してあるし。手当てしなくても、」

「だめ。腕に傷残ったらどうするの」




紫杏くんの言葉を遮る。

止血したってことは、やっぱり深い傷だったってこと。