野暮用だと言って、出てしまった紫杏くん。
なんだが、紫杏くんの両親の話を振った途端、ぎこちなかった。
…触れちゃいけない話なのかな。
もちろん、誰だって秘密ごとはあると思うしいいんだけれど、少し引っ掛かってしまう。
でも、引っかかっても何でも踏み入れちゃいけないことだと思った。
することもなくて、ソワソワと紫杏くんを待ってると、ガチャリとドアの開く音がした。
「紫杏くん、おかえり…!」
「うん。…ただいま」
ただいま、と言いながら一瞬泣きそうにみえた紫杏くんの表情。
「紫杏くん、何かあったの…?」
「ん?何かって、どうして?」
いつもの優しい笑みでもない、何も感じ取れない笑みを浮かべる紫杏くん。
「さっき、紫杏くんが泣きそうに見えて…」
「……気のせいじゃないかな。花澄ちゃんってケーキ好き?」
「うん、好きだよ」
「じゃあさ、今からあの喫茶店行かない?あそこのケーキ美味しいんだよね」
さっきと同じように逸らされる話題。
一線引かれた気がした。