提案しといてアレだけど、喫茶店の方が良かったんじゃないかって思い始めてきた。

もちろん、向かうのは俺の家だけど。



ーー今日、花澄ちゃんを誘ったのはなんとなくの気まぐれでもなんでもない。


ちょっとした任務的なものだった。


どういった経緯かはわからないが、花澄ちゃんを狙っている輩がいるらしく。


それも、裏社会を知ってしまったことに何かしら関係があるみたいで、花澄ちゃんの監視役である俺がそばに付くことになった。


この間つけた痕…、噛み跡だって、花澄ちゃんを狙う奴らを牽制するものだ。


裏社会を知ってしまった以上、花澄ちゃんはそれから先も狙われることになるかも知れない。

花澄ちゃんが溜まり場を言いふらさない限り守るのも、監視の仕事だったりする。




「ここが俺の家だよ」




住宅地の裏側。

あまり目立たない一角に立つごく普通な家。



「お邪魔します」



遠慮気味にそう言って、靴を揃える花澄ちゃん。

直後、ハッとした表情をみせる。



「紫杏くん、私、手土産も何も持ってきてないよ…!お母さんとかいるよね…?」



みるみると青くなっていく顔。

…礼儀正しい。



「大丈夫だよ。両親はいなくて俺一人だから。気にしないで」