「…もしや、可愛い服持ってないの?」
「うっ……」
さすが、お母さん、よくお分かりで…。
私の反応に全てを察したお母さんが、やれやれとため息をつく。
「お母さんに言ってくれれば服なんぞたくさん買うんだから、遠慮しないで言いなさいよ。
デート服が毎回制服だと、彼氏に飽きられるわよ」
「で、デート…、と、彼氏…?」
「違うの?彼氏と休日デートとかじゃないの?」
「……っ‼︎」
彼氏と休日デートというパワーワードに、頭が真っ白になる。
紫杏くんは、彼氏じゃないけど、これってデートなのかな…?
じゃあ、なおさら制服じゃだめ?
なんて思った挙句。
ピンポーンと、空気を読まない音が鳴る。
なんとなく、勘でわかってしまう。
紫杏くんが来たんだと。
「ほら、花澄の彼氏じゃないの?紹介は今度でいいから、早く行ってきなさい」
お母さん、そんなニヤつかないでよ…‼︎
彼氏じゃないんだからって心の中で言いながら、玄関のドアを開けて、外に出る。
