だから、違うって目で訴える。




「…そっか」



嬉しそうに、安心したように表情を緩めた紫杏くん。

突如、視界が一気に真っ暗になる。

抱きしめられてるみたい……?

…やっ、どうしよう…。

紫杏くんの腕に、香りに、全身包まれて、頭のてっぺんからつま先まで熱くなる。

こんなの初めてで、どうしたらいいかなんて分からない。



「…花澄ちゃんのそういうところが…ーー」




言いかけて、止める紫杏くん。

だけれど。

その言葉の続きよりも、心臓の音が聞こえてないか気になっちゃう…。



「紫杏くん、離して…」

「……」



無言で離す紫杏くん。

離して、って自分で言ったのにもうちょっと抱きしめて欲しかったな…て思ってしまうわがままな気持ち。

どうして、こんな気持ちになってしまうのかはわからない。



「…ああ、そうだ。花澄ちゃん、休日空けといてくれる?」

「いいけど、どうして?」

「んー…どうしてもじゃあ、だめ?」

「っい、いいよ…」



だめ?の破壊力。

可愛いとかじゃなくて、溢れ出る色気に耐えられなかった。