「その雑用ってさ、花澄ちゃんだけやらされてたの?」
「ううん。私と宮谷くんで、二人でやってたんだ」
「…へぇ」
そっけな返事に加え、
微妙に不機嫌そうな顔をする紫杏くん。
「二人で、ねぇ…」
何か呟いた後、ギュッと抱きしめられる。
「…っし、紫杏くん…!?」
…後ろから抱きしめられる状態、いわゆるバックハグにドキドキしない方がいるのだろうか。
心臓が騒がしいほど波を打つ。
ひんやりとした指の感触が首に伝わったと思った瞬間、髪の毛を掬われる。
「コレ、見せてなかったんだ」
コレって、紫杏くんに触れられた後にできた痕のこと…?
無機質な紫杏くんの声に、少し困惑してしまう。
「こういうのは、見せつけるためにあるんだから。強調させなきゃダメ」
痕に寄せてた髪の毛をわけて、痕が露わになる。
「花澄ちゃん。これは絶対隠しちゃダメだから。…絶対に」
のしかかる圧に思わずコクリ、と頷く。
なんで隠しちゃダメなのか、聞きたいけれど、聞くなとその雰囲気が言っている。
きっとここは、普通なら怖いって思う場面なのかもしれない。
