「……」

「……」



しばし、沈黙が訪れる。

軽く簡単に説明できない話なので、頭を必死に回転させる。

友達でも、先輩後輩でも、もちろん付き合ってるわけでもなければただの顔見知りというのも違う気がする。

切ろうと思えば切れそうな、でもまだ切れなさそうな矛盾した糸に繋ぎ止められている。

少し前まで、生きる世界が違った彼と関わるようになった理由は、

絶対に口にしてはいけない。

…この関係を上手く言葉にできるほどの語彙を、私は持ち合わせていない。




「…あー…ごめん、聞いちゃいけない話だった?」




よほど深刻そうな顔をしていたのか、心配したように私の顔色を窺う。



「…ううん。
あのね、紫杏くんは彼氏…じゃなくて」

「…へ?」



素っ頓狂な声をあげ、信じられないとでもいうように何度も瞬きをする和葉ちゃん。



「…じゃあ、友達…とか、先輩だったり?」

「それも、違くて。
…今は上手く言い表せないんだけどね、特殊な関係かな」

「特殊、ねぇ…」