首元を隠すように髪の毛を寄せる。
…昨日、家に帰って首元を見ると、薄いけれど確かに痕がついていて。
それが、キスマークなのか何かはわからないのだけれど、紫杏くんに触れられた部分なのは確実。
念には念を入れて、これでもかってくらい痕が見えないように首元に髪を寄せる。
絆創膏を貼ることも考えたのだけれど、逆に目立ってしまいそうだからやめることにした。
「花澄、昨日はどうだった?彼氏さんとイチャイチャできた?」
「彼氏じゃないよ…‼︎イチャイチャも、してないよ…多分…」
いちゃいちゃなんて、きっとしてない。
首元の痕だって、いちゃいちゃしてつけられたものでもないし、違うはず…。
「もー、嘘が下手なんだからぁ。
また今度、何があったか教えてよ〜!」
むふふと笑みを含みながら言う和葉ちゃん。
どうしてか話題を逸らしたくて、頭をフル回転させる。
そういえば、昨日のカフェの埋め合わせしなくちゃだよね。
確か、今日は何も予定ないし…。
「和葉ちゃん、今日って放課後空いてる?」
「空いてるよ」
「昨日言ってたカフェ行きたいんだけど、どうかな?」
私が聞いた途端、ぱぁぁと顔を輝かせる和葉ちゃん。
「いいの!?行きたい、てか行こ!」
興奮したように前のめりになる和葉ちゃん。
和葉ちゃんの嬉しそうな表情につられて、私の頬も緩みまくる。
…と、同時に少しホッと安心する。
これで紫杏くんの話題は逸らせたはず…。
ーーなんて思っていた私の考えは、甘かったのである。