「今日はどうしたの?」



昨日に引き続き今日も来るなんて、もしかして急ぎの用事でもあったのかな。

駅方向に進む紫杏くんの横を歩きながら、問いかける。



「迎えにきた。それだけだよ」

「どうして迎えに…?」

「……んー…ちょっと場所変えて話してもいい?」

「うん」




真剣な顔をする紫杏くんに、小さく頷く。

その表情で、どこに行くかだいたい予想がついた。

昨日と同じ駅で降りて、歩く先は、あの溜まり場。

初めて行った時と同じ喫茶店に入ると、今日は誰もいなかった。

ーー微妙な雰囲気が流れたまま、喫茶店の奥の方へ向かった。

紫杏くんも、私も。

一言も喋らない空間に、緊張感が生まれる。



「さっきの質問の答えだけど。
…監視しに来た」

「…うん?」




意味がわからなくて、首を傾げる。



「…監視っていうのは、そのままの意味。
花澄ちゃんがこの溜まり場を言いふらしたりしないか監視すること」


少しの沈黙が訪れた後、微笑を浮かべて口を開いた。


「監視っていっても、そんな大それたことはしないんだけどね。ただーー」




瞳の奥に、危ない色が覗く。




「ーー前も言ったように、花澄ちゃんはもう俺から逃げられない」




その瞳はいつかと同じ、逃さないという目。

その赤色に、呑み込まれてしまいそうーー。