その瞳に囚われて


和葉ちゃんの視線を追いかけると、確かにそこには紫杏くんがいた。



「あれ、花澄待ってるんじゃない?
話はまた今度にして、行ってきなよ」

「…っでも、」

「でも?花澄、あの人見た途端目が輝いてたけど。会いたいんじゃないの?」



その言葉に、ハッとする。

会いたい。

その気持ちが、形づいていく。

ーー朝と同じ、不敵な笑みを再度浮かべた和葉ちゃんが、不意に私を紫杏くんのもとへ押しやる。




「花澄ならここにいますよ〜!」




その言葉と同時に、トンッと背中を押される。

顔を上げるともちろんそこには、微かに驚いた様子の紫杏くんがいた。



「花澄ちゃんのお友達、だっけ。
ありがとう。花澄ちゃん借りるね」

「もうお構いなしに借りちゃってください〜」




和葉ちゃんがバチッとウィンクを決めて、早々と駅に向かって行く。

下校時間、チラチラ紫杏くんを見る人はいるけれど、昨日みたいに寄ってこない。

それもきっと、昨日の紫杏くんの言葉が要因。